感染リスクを減らすための個人の行動(2020年6月2日改訂)

III-2) 感染リスクを減らすための個人の行動

 現在新型コロナウイルス感染症は発症者がだいぶ減ってきており、外出自粛が解除となってきていきます。しかしながら普段通りの活に戻していく中でも、引き続き感染リスクとなる行動を避けることが、インフルエンザを含むほかの感染症にかかる可能性も抑えられるため推奨されます。

 具体的におすすめしたいのは以下の6点です。

1.手を首から上にあげないようにする。
2.飲食前(自宅でも外でも)、出社時、帰宅時、料理前、不特定多数が触るものに触れた後、鼻をかんだ後などは、手洗い・アルコールによる手指消毒を行う。
3.時差通勤や、すいている車両・ルートを選ぶなど、密集・密閉空間を避ける。
4.体調が悪いときは外出を控える。
5.2m以内に他人が入る場所ではマスクをする。(できれば不織布マスク)
6.電子タバコを含め喫煙者は禁煙をする。

 以下にこの6点についての解説を述べます。

 新型コロナウイルス感染症は、飛沫を吸い込んでしまったり、ウイルスが口の中に入ることで感染が生じますので、「首から上にウイルスのついた手をもっていかない」、「自宅にウイルスを持ち込まない」の2点に重きを置くことが大切です。また、新型コロナウイルスの感染力をなくす方法をきちんと理解し実践できるようになりましょう。

 様々なものに触れる手はいちばんの感染源となります。そのため、流水と石鹸で丁寧に手を洗う、外出先ではアルコールを丁寧に手にもみこむことで、感染力をなくすことが重要です。なお、手が汚れている場合にはアルコールが浸透しないため手洗いが必要になります。そのため、あくまでアルコールは手洗いの補助と考えておいたほうがいいでしょう。

 では、いつ手洗いをしたほうがいいでしょうか?先ほど触れた「首から上にウイルスのついた手をもっていかない」、「自宅にウイルスを持ち込まない」の二点を防ぐことを考えましょう。

 「首から上にウイルスのついた手をもっていかない」ということは、首から上に手を持っていく動作の前には手を洗ったほうがいいということになります。具体的には、飲食をする前がこれに当たりますね。そのほか目がかゆくなった時などもかく前に手を洗ったほうがいいでしょう。

 また、できるだけ減らそうとしても、無意識に鼻を触ったり、頭をかいてしまうこともあると思います。そのため、不特定多数が触るものに触る行為(例えば電車に乗る、買い物をするなど)をした後は、あまり間を置かずに手を洗い、手を清潔にすることが望ましいです。具体的には職場や目的地に着いたところで、一度トイレに行って手を洗うのが良いでしょう。

 「自宅にウイルスを持ち込まない」ということは、帰宅後あまりものに触らずに手を洗うことが大切です。その他、自分が無症状の感染を起こしているかもしれないと考えると、家族に広めないためにも、調理の前、鼻をかんだ後などにこまめに手を洗うことも重要です。

 また、ドアノブなどのよく触る場所は、素材にもよりますが希釈した次亜塩素酸(家庭用の塩素系漂白剤)やアルコールを湿らせた布で拭くことでコロナウイルスの感染性をなくすことが可能です。次亜塩素酸は、特に金属などでは腐食を起こす可能性があり、水拭きをしましょう。詳しい希釈方法などは、こちらをご覧ください。https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000614437.pdf

 なお、スプレーを直接するのはスプレーの勢いでウイルスをまきあげてしまう可能性があるので、スプレーなどで湿らせたティッシュやキッチンペーパーで拭くようにしましょう。

 次に、ウイルスがいる可能性の高い環境を避けるということです。皆さん一人一人が、いわゆる3密である密集・密接・密閉状態が危険であることを意識することが大切です。ただ、非常事態宣言中のように自粛するのではなく、極力回避するという発想に考えを変えていく必要があります。

 新型コロナウイルスに関してクラスターを起こさない工夫を各事業所が行っています。しかしながら、自分で選択できる場面もたくさんあります。たとえば、通勤に関しては、時差通勤や、混雑車両を避ける、エレベーターには乗らずエスカレーター・階段を使うといった工夫が考えられます。

 3密についてですが、実際に生活していると避けられないことも多いと思います。まず、密接(接触感染対策)ですが、握手やハイタッチなど、人と人との肌の触れ合いは家族以外にはなかなか難しくなるかもしれません。ものに触れずに済めばそのほうが望ましいですが、電車やバスで吊革につかまらないのも転倒の可能性が上がるためかえって危険です。そこで、ものにどちらの手で触れたかを覚えておいて、手洗いやアルコールによる手指消毒を行うまでは、その手で鼻や頭を触らないように気を付けるのが現実的でしょう。

 また、密集(飛沫核感染対策)に対しては、不織布のマスクをきちんとつけることが、ウイルスの侵入を防ぐのに幾分なりとも効果があると考えられています。息を吸うときに弱く抵抗があるということは、きちんとフィルターがされているということです。きちんとつけられていない場合や、ガーゼマスクやウレタンマスクのような吸うときの抵抗を感じないマスクでは自分の身を守る効果はかなり劣ると考えられています。(後で述べますがほかの人へ広めるのを防ぐ効果は認められます。)

 さらに、大きく息を吸う行為を避けることは、人の生来の防御を超えて下気道までウイルスを運んでしまう可能性が高まるので、今後の研究が待たれるところですが、感染や重症化を抑えてくれる可能性があります。密集(飛沫核感染対策)・密閉(空気感染対策)が起こる場所では、例えば激しい運動や大声を上げる、歌うといった、大きな声を出すことを避けることが必要かもしれません。具体的には、階段を駆け上って息が上がった状態で満員電車に乗り込むというのはあまりおすすめできません。

 自分が感染者である可能性を考慮してウイルスを拡散させないように気を付けることも重要です。いちばん大事なことは体調が悪いときは、自宅で待機するということです。社会的にも、以前は体調が悪くても出社を求められることも多かったですが、今は体調が悪いのに出社することはむしろ非難されることとなってきています。風邪薬や解熱剤などで熱が下がったり、ある程度元気になっても、薬を飲まなくてはいけない状態というのは体調が悪いと考えてください。体調が悪い場合には、上司などに相談し自宅待機が可能か、また症状はあるが寝ているほどではない場合は在宅勤務、オンライン会議などの手段が可能か相談してみましょう。

 また、自身が無症候性の感染者である可能性も考えて、混雑する場所を通る外出時にはマスクをつけるのが望ましいでしょう。その際には、不織布マスクが一番効果が高く、ガーゼマスク、ウレタンマスクの順に効果が劣ると一般的にされています。

 新型コロナウイルス感染症では、喫煙者で死亡例が多いことが知られています。禁煙をすると、数日で気道上皮にある異物を排除する機能である線毛運動が改善し、粘液も正常化してくることが知られています。喫煙(電子タバコも含む)をされている方は、今すぐに禁煙を開始しましょう。ちなみに、禁煙は「本数を減らす」のではなく、「今すぐやめる」ほうが成功しやすいといわれています。また、禁煙が成功するまで何回も失敗している人が大多数です。まずやめて、「きょうは夜まで吸わずに済んだ」「2日間吸わずに済んだ」などと、吸わないでいる時間が長くなるように努力してみましょう。