今後の見通し(2020年6月1日改訂)

I-4) 今後の見通し

 新型コロナウイルス感染症は、今のところ 終息※の目途がついていません。一般の風邪の原因となる他のコロナウイルスは冬季に流行のピークが見られ、夏季には少ないことがわかっています。新型コロナウイルスも同様に季節性があるかは今のところわかっておらず、今後の推移をみていく必要があります。季節性がある場合には夏季に流行が抑えられても、次の冬に再流行がくる可能性があり注意が必要です。厚生労働省クラスター対策班の西浦博・北海道大学教授は415日の記者会見で、新型コロナウイルスの感染拡大で、人と人との接触を減らすなどの対策を全く取らない場合、国内では重篤患者が約85万人に上り、半数が亡くなる恐れがあるとの試算を公表し、その上で人と人との接触を8割減らせば、流行を抑え込めるとの見方を強調しています。一部諸外国では、ロックダウン(都市封鎖)等の厳しい措置を行うことで感染拡大のピークが抑えられました。日本においても、 47日に東京都、大阪府等の7都道府県に対し、緊急事態宣言(416日に全国に拡大)が出されてから新規感染者数は減少し、525日には全国で緊急事態宣言が解除されました。

 51日に発表された新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 による「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(*1)において、諸外国での中長期の見通しについての検討、今後の国内の見通しについて述べられています。英国からの論文(*2)ではワクチンが入手可能になるまでの1年半以上、米国からの論文(*3)では集団免疫を獲得するまでの2022年までは、再流行が想定され、医療崩壊を防ぐために社会的距離政策(人と人との距離を確保すること)を断続的にでも継続していかなければいけない可能性を示しています。国内の今後の見通しについては、国内においても感染状況に応じた持続的な対策が必要になるとしています。感染の状況が厳しい地域では新たな感染者数が一定水準まで低減するまでは、医療崩壊を防ぐため、引き続き徹底した行動の変化(外出自粛等)が必要であり、一方、新たな感染者が限定的となった地域でも、再度感染が拡大する可能性があり、長丁場に備え、感染拡大を予防する「新しい生活様式」に移っていく必要があることを提案しています。「新しい生活様式」の具体的な実践例は54日に出された「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(*4)に載せられていますが、「3つの密」の回避、手洗いやマスクの着用と人と人との距離の確保等基本的な感染対策を続けること、仕事・職場ではテレワークや時差出勤、テレビ会議などにより接触機会を減らす対策をとること等になります。この「新しい生活様式」については、57日に厚生労働省のホームページにも発表されています(*5)。また当ホームページのⅢ-5の「新しい生活様式」もご参照ください。

 新型コロナウイルスは国内での流行が一旦は抑えられても、ワクチンの開発や有効な治療法の確立までは、再流行の可能性があります。私たちは、新型コロナウイルスとの共存の方法を模索していく必要があるのかもしれません。

 ※ 患者の発生が一定期間以上見られなくなること。収束は患者発生は続いているものの増加傾向が見られなくなり小康状態にあること。

*1 新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言(2020年5月1日)
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000627254.pdf

*2 インペリアル・カレッジ・ロンドン発表
https://www.imperial.ac.uk/media/imperial-college/medicine/sph/ide/gida-fellowships/Imperial-College-COVID19-NPI-modelling-16-03-2020.pdf

*3 ハーバード大学発表
https://science.sciencemag.org/content/early/2020/04/24/science.abb5793

*4 新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言(2020年5月4日)
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000629000.pdf

*5 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_newlifestyle.html