研究活動と新型コロナウイルス感染症

V-4 研究活動と新型コロナウイルス感染症

新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、東京大学では2020年4月8日から活動制限レベルが3に引き上げられ、キャンパスにおける活動制限が厳格化されました。2020年5月25日に東京都に対する緊急事態宣言が解除された後、本学の活動制限レベルも段階的に引き下げられ、2020年713日からは活動制限レベル0.5となっています。レベル0.5では、授業については感染拡⼤に最⼤限の配慮をして、対⾯授業、演習・実習を制限しつつ、オンライン講義を中⼼に授業を⾏います。また、学生の課外活動は、感染拡⼤に最⼤限の配慮をして、⼀部の課外活動が許可されます。キャンパスへの入構にあたっては、引き続き、守衛のいる門のみ開き、身分証の提示が必要とされています。学内会議は、感染拡⼤に最⼤限の配慮をして、対⾯会議を⾏いますが、オンライン参加が推奨されます。さらに、研究活動に関しては、感染拡⼤に最⼤限の配慮をして、研究活動を行うことができます。活動制限レベルの引き下げに伴い、各種制限も徐々に緩やかになってきていますが、引き続き、感染予防を十分に心がける必要があります。活動制限レベル別の、活動制限の具体的な内容については、「新型コロナウイルス感染拡⼤防⽌のための東京⼤学活動制限指針」(https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400137691.pdf)に、まとめられています。

なお、ロックダウンされた欧米諸国の都市の大学でも、研究活動に対して様々な対応が進められているようです。具体的には、研究室メンバー内で公共交通機関に依存しないキーパーソン数名の選定や、動物施設への負荷軽減のためマウス交配を最小限にするほかケージ数増加の禁止、さらに、解析用パソコンへのリモートアクセスやフリーザー温度の遠隔監視システムの設定、SlackやZoomなどのアプリケーションを用いた研究室メンバー間でのコミュニケーション環境の整備などの対策がとられているようです。各都市の状況にもよりますが、新型コロナウイルスに関する研究を含めたessentialな実験、必要最小限のマウス交配や細胞株に関する作業のみ基本的には許可される一方で、研究室メンバーに対しては、たとえ優先度の高い研究であっても、研究室内での実験を継続しなければならないといった精神的プレッシャーを現状において感じる必要はないという点について、あらかじめ周知するといった、研究室メンバーのメンタル面に十分な配慮を心がけた対応もなされているようです。

現在、東京大学でも感染拡大防止などの観点から、オンライン授業やWeb会議といった取り組みが行われています。詳細については、「オンライン授業・Web会議 ポータルサイト@ 東京大学」(https://utelecon.github.io/)というWebサイトにまとめられています。オンライン化の取り組みは、感染拡大防止に有効なのはもちろんですが、さらに、今後の働き方の見直し等の視点からも、有意義に活用することで様々な可能性が広がります。その一方で、個人情報保護やセキュリティについて、十分に留意する必要があります。情報基盤センターから、「Zoomを用いたオンライン講義を安全に進めるために」(https://apps.adm.s.u-tokyo.ac.jp/WEB_info/p/pub/5756/Zoom.pdf)という通知が出されていますので、ご確認ください。

東日本大震災の際は、研究室内において薬品棚などが転倒した事例もあり、その後、転倒防止などの措置が強化されました。研究の内容やメンバー構成などは、学部や研究室によって多種多様ですので、今回のことをきっかけに、自分たちの研究室内ではどのような対策が必要か、予期しない状況に備えて、あらためてシミュレーションしてみたり話し合ったりしてみることも有意義と考えます。新型コロナウイルス感染症については、徐々に各国から報告が増加していますが、依然として解明されていない点も多いということを念頭に置き、研究活動においても十分な対策をとることが重要です。

現在はさまざまな研究活動が制限されていますが、新型コロナウイルス感染症対策の視点では研究のテーマに関わらず、

  •   ・ヒトから唾液、頬粘膜(細胞)などの検体を採取する行為
  •   ・発声させる、呼気を採集するなどの行為
  •   ・長時間対面でインタビューを行う行為
  •   ・身体的接触をともなう行為
  •   ・大人数を一室に集めて行う行為

などは注意が必要です。研究プロトコールの変更や延期、中止などの検討が必要になるかもしれません。研究チームや倫理委員会などとの協議を検討して下さい。

また、新型コロナウイルスを含むことを想定している検体の取扱については指定感染症の病原体であり取扱に法的規制がありますので適切な取扱が求められます。

研究・教育活動は大学の使命ですが安全に、適切に実施できるよう配慮してください。