症状、経過、予後

II-2) 症状、経過、予後

1.典型的な症状、経過は?

発熱や悪寒、だるさの風邪症状、その後に咳や痰の呼吸器症状が現れ、重症になれば呼吸困難や胸部圧迫感、意識が朦朧とする等の症状が現れます。次の図のように、まず風邪症状が現れ、一部の方は肺炎症状を起こし、さらにその一部の方が重症(人工呼吸器が必要な状況)となるとされます。


(新型コロナウイルス感染症診療の手引き(第1版, 厚生労働省)より引用)

症状の割合に関して、中国から以下の報告があります。なお、髄膜炎を起こす国内の報告もありますので、今後肺炎以外の症状に関しても報告が上がってくるかもしれません。

症状 有症状者の中での割合
50~80%
発熱 85% (症状出現時は、45%)
倦怠感 69.6%
息苦しさ 20~40%
上気道感染症状(鼻水、咽頭痛など) 15%
消化器症状(嘔吐や嘔気、下痢) 10%

2020年2月1日に新型コロナウイルス感染症が指定感染症となった以降、第16週(2020年4月22日)までに感染症発生動向調査(NESID)へ届出られた10,590例のうち、主な症状(重複あり)は、届出時点で発熱8,136例(76.8%)、咳4,877例(46.1%)、咳以外の急性呼吸器症状953例(9.0%)、重篤な肺炎736例(6.9%)であったと国立感染症研究所より報告されています。これは新型コロナウイルス感染症と診断まで至った方の届出時点での症状である事を念頭に置く必要があります。

2.無症状の人もいる?

中国からの報告ですが、166名の新型コロナウイルス感染症検査で陽性の中で78%の方が明確な症状を示さなかったというものがあります。日本のクルーズ船での感染事例においても半分程度の方が無症状でした。また、程度は不明であるものの、無症状の方でも感染力がある報告が相次いでおり、このことが感染の封じ込めに難渋する原因の一つでもあります。

3.最近、味覚障害、嗅覚障害が初期症状として注目されているが?

初期症状としての味覚障害、嗅覚障害の報告が最近されはじめ、アメリカやイギリスの耳鼻咽喉科学会では新型コロナウイルス感染症を疑う際にこれらの症状を確認することを提案しています。

また、欧州からは軽症から中等症の新型コロナウイルス感染症患者で80%以上の患者で味覚や嗅覚の障害が出ていたとの報告がありますが、現時点では裏付けにまだ乏しい状況である為、日本の耳鼻咽喉科学会からは以下の周知が出ています。(2020年4月2日)

(1) 急に「におい」や「あじ」の異常を感じるようになった場合には、万が一、新型コロナウイルス感染症であったときに周囲の人に感染を拡大する可能性がありますので、2週間は出来るだけ不要不急の外出を控えてください。その間、医療機関への受診は控え、体温を毎日測定し、手洗いをこまめにしてください。人と接する際にはマスクをつけて対話をしてください。

(2) 嗅覚・味覚障害の治療は急ぐ必要はありません。自然に治ることも多いのでしばらく様子を見てください。特効薬はありませんが、2週間経っても他の症状なく嗅覚や味覚が改善しない場合は耳鼻咽喉科外来を受診してください。

5月7日に発表された論文(※1)では嗅上皮にある細胞にSARS-CoV-2の受容体があり感染すると嗅細胞が傷害され嗅覚異常が生じる可能性が示されています。

※1 Expression of the SARS-CoV-2 Entry Proteins, ACE2 and TMPRSS2, in Cells of the Olfactory Epithelium: Identification of Cell Types and Trends with Age.
Katarzyna Bilinska, Patrycja Jakubowska, CHRISTOPHER S. VON BARTHELD, and Rafal Butowt
ACS Chemical Neuroscience Just Accepted Manuscript
DOI: 10.1021/acschemneuro.0c00210