予防接種

II-5) 予防接種

新型コロナウイルスに対するワクチンの開発は、長期にわたりこのウイルスの流行をコントロールしてゆくためには非常に重要な課題であると考えられます。

新型コロナウイルスのワクチン開発は急速に進んでいます。新型コロナウイルスの遺伝子配列は2020111日に報告されました。その後新型コロナウイルスに対するワクチンの最初の臨床試験がアメリカで2020年316日に開始され、さらに202048日の時点で5種類のワクチンがヒトでの臨床試験を開始しています。臨床試験以前の開発段階のものも含めると、100以上のワクチン候補があります。過去のSARSコロナウイルスやMERSコロナウイルスでの経験から、ウイルスのS proteinがワクチンの標的として最適であることがわかっており、ワクチン開発の速度を上げることに役立っています。実際に現在開発中の新型コロナウイルスのワクチンもS proteinを標的としています。また今回の新型コロナウイルスの開発では、従来からの不活化ワクチンの他にDNAワクチンやRNAワクチンといった新しいタイプのワクチンが多く含まれています。安全性などの検証は慎重に行う必要がありますが、こうした新しいタイプのワクチンは従来のものと比較して開発の速度は速いと考えられています。日本では大阪大学のグループがDNAワクチンの開発を表明していて8月には初期の臨床試験を開始するとしています。

今後のワクチン開発の見通しですが、まず臨床試験が第1相から第3相まであり、さらに FDAなどの認可を経て、大量生産のための設備の用意と生産、多くの人々への接種と進みます。臨床試験開始から接種まで最短でも6ヶ月、より現実的には12から18ヶ月程度かかると考えられています。このようにワクチンの開発にはある程度の時間がかかるものと予想されており、場合によっては、十分な免疫を獲得するために複数回の接種が必要になるなど、集団免疫の獲得までにはさらに時間がかかる可能性もあります。それでもこれまでのワクチン開発と比較すると格段に速い予測となっており、例えばエボラウイルスに対する最初のワクチンは実用化されるのに約5年間を要しています。

一部の研究者は、結核ワクチンであるBCGの接種により新型コロナウイルスの感染予防効果が得られると考えているようです。これまで多くの疫学研究により、BCGには結核菌の感染予防効果だけではなく非特異的な感染症を予防する効果があるとされています。しかしBCGが新型コロナウイルス感染に対して予防効果を持つのかどうかについては、これまでのところ科学的に示されているわけではありません。従って現時点では、新型コロナウイルス感染予防を目的としてBCGを接種することは推奨されていません。WHO2020412日付で、”There is no evidence that the Bacille Calmette-Guérin vaccine (BCG) protects people against infection with COVID-19 virus. Two clinical trials addressing this question are underway, and WHO will evaluate the evidence when it is available. In the absence of evidence, WHO does not recommend BCG vaccination for the prevention of COVID-19. “との声明を発表しています(https://www.who.int/news-room/commentaries/detail/bacille-calmette-gu%C3%A9rin-(bcg)-vaccination-and-covid-19)。また日本ワクチン学会は、202043日付で同様の声明を発表しています(http://www.jsvac.jp/pdfs/kenkai.pdf)。

参考文献

Immunity. 2020 Apr 14;52(4):583-589.
Rev Drug Discov. 2020 Apr 9. doi: 10.1038/d41573-020-00073-5.