コレステロール、中性脂肪とは
コレステロール、中性脂肪は人が生きていく上で必要な脂質の一種です。コレステロールは、体を構成する細胞を包む細胞膜や各種ホルモン等の原料であり、中性脂肪は、人間が活動するときのエネルギー源として使われます。血液中のコレステロールや中性脂肪が多かったり、少なかったりする状態を「脂質異常症」といいます。
いわゆる悪玉のLDLコレステロールや中性脂肪が高い状態や、善玉のHDLコレステロールが低い状態を放置しておくと、動脈の壁に脂質が蓄積して、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患や脳梗塞などの脳血管障害の危険が増えます。「脂質異常症」は、生活習慣の見直しなどで、改善することも多く、またそれでもなお高い場合はお薬が必要なこともあり、早めの対処が大切です。
また、脂質の値が極端に低い場合も注意が必要です。中には甲状腺機能亢進症や肝臓病、貧血、栄養不良などの問題が隠れている場合もあります。
HDLコレステロール
血管壁にたまったコレステロールを回収し動脈硬化を抑制します。このため善玉コレステロールと呼ばれます。
検査会社基準範囲 |
健康診断判定基準※ |
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異常なし |
軽度異常 |
要再検査・生活改善 |
要精密検査・治療 |
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A |
B |
C |
D |
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40~85(男性)、40~95(女性) | 40 ~ | ― | 30 ~ 39 | ~ 29 |
※2024年4月から日本人間ドック・予防医療学会による基準範囲が変更になりました(従前:HDLコレステロール34以下がD、35~39がC)。
日本動脈硬化学会による診断基準:40 mg/dL未満は低HDLコレステロール血症
HDLコレステロールが著しく低い場合は他の病気がもとにあったり、動脈硬化のリスクとなるため、注意が必要です。高い場合にも生活上の注意が必要な場合や、動脈硬化のリスクとなる場合があります。
LDLコレステロール
肝臓のコレステロールを身体の隅々、血管壁に運んでいきます。血液中にLDLコレステロールが増えすぎると、コレステロールが血管壁にたまり、血液がスムーズに流れずに血管を傷つけたり、詰まらせたりしてしまいます。悪玉コレステロールとも呼ばれます。
検査会社基準範囲 (mg/dL) |
健康診断判定基準 |
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異常なし |
軽度異常 |
要再検査・生活改善 |
要精密検査・治療 |
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A |
B |
C |
D | |
65〜139 | 60〜119 |
120〜139 |
140〜179 |
~ 59* 、180 ~ |
*: LDLコレステロールが59以下であっても極端に低くない限り問題ないと判断されることもあります。
中性脂肪が400mg/dL未満で空腹時採血の場合にはLDLコレステロール値で脂質判定を行います。採血が空腹時ではない場合には、non-HDLコレステロール値で、脂質判定を行います。
日本動脈硬化学会による診断基準:140 mg/dL以上は高LDLコレステロール血症、120~139mg/dLは境界域高LDLコレステロール血症
LDLコレステロールの高値が持続している場合や、若い頃から高い場合は特に注意が必要です。低い場合にも、著しく低い場合には、他の病気がもとにある場合もあり、注意が必要です。
中性脂肪
食事中の中性脂肪や、肝臓で作られた中性脂肪は、体内のエネルギー源として、血中を運ばれます。
検査会社基準範囲 (mg/dL) |
健康診断判定基準 |
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異常なし |
軽度異常 |
要再検査・生活改善 |
要精密検査・治療 | |
A |
B |
C |
D | |
30~149 | 30~149 | 150~299 | 300~499 | ~29*、500~ |
*: 中性脂肪が29以下であっても極端に低くない限り問題ないと判断されることもあります。
中性脂肪が400mg/dL以上や採血が空腹時ではない場合にはnon-HDLコレステロール値で脂質判定を行います。
日本動脈硬化学会による診断基準:空腹時採血*で150 mg/dL以上、随時採血で175mg/dL以上は高トリグリセライド血症
*基本的に10時間以上の絶食を「空腹時」とします。ただし水やお茶などカロリーのない水分の摂取は可能です。空腹時であることが確認できない場合を「随時」とします。
中性脂肪が増えすぎると、悪玉のLDL-コレステロールがさらに悪玉になったり、HDL-コレステロールが減りやすくなることがわかっており、動脈硬化を促進すると言われています。また、中性脂肪が著しく高値の場合に急性膵炎をおこすことがあり、注意が必要です。
総コレステロール
検査会社基準値(参考):120〜219mg/dL
健康診断では判定の対象ではありません。
non-HDLコレステロール
non-HDLコレステロールは、総コレステロール(TC)からHDLコレステロールを引いた値です。すべての動脈硬化惹起性リポ蛋白中のコレステロールを表し、2012年度から動脈硬化疾患予防ガイドラインに導入されました。特に、中性脂肪が400mg/dL以上や、採血が空腹時ではない場合には、non-HDLコレステロール値で脂質判定を行います。
検査会社基準範囲 (mg/dL) |
健康診断判定基準 |
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異常なし |
軽度異常 |
要再検査・生活改善 |
要精密検査・治療 | |
A |
B |
C |
D | |
90 ~ 149 | 90 ~ 149 | 80 ~ 89、150 ~ 169 | 67 ~ 79、170 ~ 209 | ~ 66、210 ~ |
non-HDLコレステロールが高い場合には、動脈硬化への注意が必要です。
LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪が全てA判定に該当する場合、non-HDLコレステロールが90~149をはずれる場合、判定はBとなります。
日本動脈硬化学会による診断基準:170mg/dL以上は高non-HDLコレステロール血症、150~169mg/dLは境界域高non-HDLコレステロール血症
参考
動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版|日本動脈硬化学会
出典:「脂質異常症/高脂血症」(厚生労働省健康づくりサポートネット)
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/keywords/dyslipidemia